最高裁決定平成12年5月1日 担当 杉原則彦最高裁調査官説明
「面接交渉権について」
(一)
いわゆる面接交渉権とは、親権者又は監護者として自ら実際に子の監護教育をしていない方の親が、その子と個人的に面接したり文通したりして交渉する権利である、と説明されている。(中略)
我が国の法令には面接交渉について定めた規定はない。(中略)
実務的には、東京家審昭和39.12.14家裁月報17巻4号55頁が初めて面接交渉を命じて以来、多くの裁判例が集積され、現在では、両親の離婚後に子との面接交渉を求める審判の申立ては、「子の監護について必要な事項」又は「子の監護について相当な処分」として家事審判事項に属するとして(民法766条、家事審判法9条1項乙類4号)、家庭裁判所が、必要に応じて面接交渉の方法を定め、又は面接交渉を制限するという取扱いが定着している。そして、面接交渉についていずれの見解を採るかにかかわらず、家事実務においては、面接交渉を認めることが子の福祉に適合するかどうかの観点から面接交渉の許否が決せられているようである。
このような事情に照らすと、面接交渉の内容は監護者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり、面接交渉権といわれているものは、面接交渉を求める権利というよりも、子の監護のために適正な措置を求める権利であるというのが相当である。
そうであるとすれば、子との面接交渉を求める審判の申立ては、「監護について必要な事項」又は「監護について相当な処分」に関するものとして家事審判事項に属すると考えられるところであり、家事審判法9条1項乙類4号、民法766条によりこれを認める実務の取扱いは是認されるべきものである。
(二)
(略)また、面接交渉権という権利を認める立場に立つと考えられる審判例も、親と子を面接交渉させることが子の福祉に反するときには、面接交渉を全面的に否定しているのであって、結果的には、権利性を否定するに等しいとも考えられる。面接交渉を求める親の心情が情理に沿うものである一面は否定できないとしても、面接交渉の可否や方法については、親の要望よりも子の福祉を第一に考えるのが相当であると考えられ、また、それが実務の主流である。そうすると、前述のとおり、面接交渉の内容は監護者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり、面接交渉権といわれているものは、面接交渉を求める権利というよりも、子の監護のために適正な措置を求める権利であるというのが相当である。